COACHING
コーチのエクスペリエンス

その人の選択に寄り添う、という経験

COACHING

34歳のとき、十数年過ごした会社を辞め、はじめての転職を経験しました。
日本で知られはじめていた ” コーチング ” の経験を積むためでした。

入社初日の光景を今も覚えています。
ドアを開けたら、すぐにわかった ” 自分の席 ” 。
天井から ” 大歓迎 福島弘さん ” の垂れ幕、その下にお菓子、風船で手作りされたクマやウサギ。
先輩の拍手に迎えられ、コーチのキャリアへと一歩踏み出した朝でした。

ところがまもなく、あることに直面します。
それは営業をやらなくてはいけないという現実。
入社したらすぐコーチングの業務につけると思っていました。
でも考えれば当然のこと、「 仕事を自分で見つけてきて、はじめて仕事ができる 」。
遅ればせながら「 仕事は当たり前にあるのではない 」と気づいた瞬間でした。

営業未経験の私は、まず四季報を買い、企業の代表電話にテレアポを試しはじめました。
毎朝出社すると電話とヘッドセットが置かれた個室に入り、一心不乱に電話をかけます。
目的は代表番号から人事部につないでいただき、商談のアポイントを獲得することです。
しかし、かけてもかけてもアポがとれません。音声アナウンスにそのまま断られ、電話が切れることも。
一ヶ月後ようやくアポがとれ出しました。
ところが今度は、訪問しても訪問しても受注に至りません。
結局、7月に入社して12月まで受注ゼロを行進させることとなってしまいました。

浮上のきっかけが、2つあります。

X’masのイルミネーションが灯りはじめる頃、共にファシリテーションを学ぶ友人達から、忘年会の誘いをもらいました。
参加しますと即答した私には、ささやかな期待が。
異業種から集まる友人達の中に、営業のプロフェッショナルTさんがいたからです。
少しでも打開するヒントを見つけられたら、そう思いながら当日足を運びました。

勉強を兼ねた高密度な会を終え、次に移動する道すがら。私は思い切って、Tさんに尋ねました。

「 僕ずっと受注ゼロなんです。Tさん、営業って一体何やったらいいんですか? 」

常に笑顔で明るいTさんが、力のこもった目で見つめ返し答えてくれました。

「 思うんだけど、営業の仕事というのは、お客さまが望んでいることをただ考え抜く。
  それだけでいいから」

そうか、それなら自分にも努力の余地がある。
そう思わせてくれたこの言葉が、一つ目のきっかけです。

二つ目のきっかけは、自分が起こした変化です。

ある朝、一つのことに気づきました。
立ち上げたパソコンの画面、まず目に飛び込んでくるのがフォルダー名。
コーチングフォルダー、研修フォルダー、そして営業フォルダー。
営業フォルダーの『 営業 』の二文字を見た瞬間、自分の気分が落ちている。
そう気づき、この二文字を反射的に削除し、点滅するカーソルを見つめながら別の言葉を探しました。
数分後降りてきた言葉、それが『 ファーストコーチング 』。
そのままフォルダーの名前を書き変えました。

「 顧客を訪問するのは営業ではなく、その人が組織で実現したいことを伺う、
  最初のコーチング場面なんだ 」

これがファーストコーチングに込めた意味。その日を起点に、営業が楽しくなりました。
まもなく当時の三越さんが、最初の受注をもたらしてくださいました。

* * *

マネジメントコーチングの一般的な定義は、「 部下の自発的行動を促進するコミュニケーション技術 」。
そこを踏まえた上で、鎌倉VisionCoachがお伝えしているコーチングは、

 『 部下のセルフコーチ力を高めるマネジメント技術 』

です。

人は、「 選んでいることを、たしかに選んでいる 」と自覚することで、自身のパフォーマンスを最大化できます。
コーチの仕事とは、「 その人の選択に寄り添えるか 」を毎瞬試される経験だと感じています。